• TOP>
  • 理事長室へようこそ

Vol.86 まけるな1年生

タイトル:理事長室へようこそ

 大きなピカピカの真新しいランドセルを背負った新入小学1年生が両親に手を引かれながら、大型住居施設から何人も出てきた。30人くらいが広場に集まると並んで歩き出した。小学校までの約1キロの道のりを元気そうに、楽しそうに歩いていた。多くは母親が手をつなぎ、父親がついて行くようだった。余り走り回ることもなく、一寸よそ行きの顔をして整然と並んで歩いていた。ランドセルが大きく背中からはみ出し、ランドセルが歩いているような子もいた。昨日は小学校の入学式の日だった。花曇の朝だったが、すがすがしい陽光が差し込んでいた。桜の満開は少し過ぎたが、入学を待っていたかのように歩道に舞い落ちて敷き詰められた無数の桜の花びらが入学を祝福するように子供達の新調の靴にまとわりついていた。子供より両親の方が着飾っていそいそしていた。入学する子供が主役なのに、わが子の晴れ舞台に便乗して、自分達の方が楽しんでいるようにも見えた。父親の中にはカメラを首から提げているものもいた。

 最後の方に1人の子供が母親に抱かれてみんなの後をついていっていた。兄か姉が入学で、子供も付き添いかと思った。しかし、周りには子供の姿はなく、若い父親が大きな買物バッグ持っていて、その中に黒のランドセルが収められていた。この子も小学校入学なのだとわかった。今にも泣き出しそうで顔色も白かった。余り体力もないように見えた。盛んに母親が話しかけているが笑顔が出るどころか、今にも声を上げて泣き出しそうに緊張しきって蒼白になっていた。学校に着いたらどうなるのか心配になったが、校門近くで別れた。少し歩いて振り返ったときには建物の中に消えていた。

 この小学校は週2回ほど朝45分くらい歩いて財団に来ている通勤経路だ。健康のためといえば聞こえはいいが、少々太り気味でメタボ対策も兼ねている。このとき見かけた光景は自分の小学校入学時と重なった。3月生まれで、あまり体力もなかったのだろうか、入学当初よく熱を出して学校を休んだり、学校で吐いたり下痢をしたりして母親が何回か迎えに来てくれたことを思い出した。小学校の入学は子供にとっては環境が激変し、ストレスが大きいことは当然だろう。4月生まれと3月生まれでは体力も学力も成長過程で大きく異なっている。しかし、数年たてば弱々しそうに見えた子供も、体力も少しずつ向上し、逞しく育っていくだろう。何か弱点があっても、人はそれを克服するために努力して大きく成長していく。人の成長は家庭と学校と社会における教育が全てである。学校では集団としての教育とともに、一人ひとりの適性を見つめた的確な教育を行っていけば、多くの有為な人材がこの新入生の中からも育っていくだろう。母親に抱かれ入学式に向かっていった子の20年後の大きな成長を期待したい。まけるな1年生。

平成26年4月10日
公益財団法人ちば県民保健予防財団
理事長 藤澤武彦

バックナンバー

vol.89
歴史に彩られた町を訪れて (H26.12.26)
Vol.88
今日一日に全力を尽くす (H26.12.12)
Vol.87
“おもてなし”のために今何をなすべきか? (H26.5.16)
Vol.86
まけるな1年生 (H26.4.10)
Vol.85
温故知新 (H26.4.7)
Vol.84
連帯と絆 (H25.9.30)
Vol.83
発酵と腐敗 (H25.3.29)
Vol.82
がんの時間学とがん検診 (H25.1.31)
Vol.81
赤く染まった山々と千曲川 (H24.11.21)
Vol.80
がん検診と自助の精神 (H24.10.11)
Vol.79
夏休みの一風景 (H24.8.31)
Vol.78
一つ議論したら一つ決断し、一歩前進する (H24.6.7)
Vol.77
市場競争原理と安全安心は両立しないか (H24.5.18)
Vol.76
医師不足問題とメディアの役割 (H24.5.2)
Vol.75
公益財団法人のスタートにあたって (H24.4.2)
Vol.74
アンサンブル (H23.11.29)
Vol.73
価値観のパラダイムシフト (H23.9.12)
Vol.72
花ことばのように純粋にしなやかに (H23.8.5)
Vol.71
ファジーは日本人の特性 (H23.6.2)
Vol.70
感性と理性の関連性 (H23.4.28)
Vol.69
「想定」には「内」はあっても「外」はない (H23.4.7)
Vol.68
誇り高き沈黙 (H23.3.24)
Vol.67
大銀杏と石垣が見てきた400年の歴史 (H23.3.11)
Vol.66
自然が演出する虚実のドラマ (H23.2.7)
Vol.65
事業仕分けは永遠に続く (H23.1.5)
Vol.64
危機を危機と考えない (H22.12.16)
Vol.63
龍馬の踏みしめた石畳を登って (H22.11.5)
Vol.62
自分の足元を見つめる (H22.10.8)
Vol.61
自然に対する崇高な祈り (H22.9.15)
Vol.60
大賀ハスの生命力 (H22.8.27)
Vol.59
恩師の言葉 (H22.8.2)
Vol.58
人事を尽してこそ (H22.7.22)
Vol.57
暗闇と光が紡ぎ出す芸術 (H22.7.13)
Vol.56
低価格競争の末路 (H22.6.23)
Vol.55
便利さで失うもの (H22.6.1)
Vol.54
外から内へ (H22.5.18)
Vol.53
改革を持続し、成長する (H22.4.27)
Vol.52
桜花の祝福 (H22.4.9)
Vol.51
失敗を恐れない (H22.4.2)
Vol.50
金メダルは自分に克った者が得るもの (H22.3.19)
Vol.49
“No”とは言わない (H22.3.5)
Vol.48
変化できる組織だけが生き延びる (H22.2.8)
Vol.47
変革の時に考えること (H22.1.18)
Vol.46
企業の構造と機能は (H22.1.4)
Vol.45
慣れても狎れない (H21.12.17)
Vol.44
自分の未熟さを知る (H21.11.26)
Vol.43
アジアは燃えている (H21.11.16)
Vol.42
厳しい大自然が見せた一時のやさしさ (H21.10.21)
Vol.41
無秩序という秩序 (H21.10.2)
Vol.40
変えてはいけないものを堅持すれば変えるのは容易 (H21.9.15)
Vol.39
競争は誰とするのか (H21.8.31)
Vol.38
人が一番成長するのは失敗したとき (H21.8.18)
Vol.37
新医師臨床研修制度が目指したものは何だったのか (H21.7.29)
Vol.36
大切な仕事はマニュアルの外にもある (H21.7.15)
Vol.35
群生する睡蓮の白い花と里山の風情 (H21.6.25)
Vol.34
教育とは忍耐すること (H21.6.5)
Vol.33
外見は心の内部の一部 (H21.5.22)
Vol.32
仕事を通して人格は形成される (H21.5.8)
Vol.31
桜吹雪は川面で天の川になった (H21.4.21)
Vol.30
知らないことを「知らない」と言える勇気を持つ (H21.4.10)
Vol.29
無礼講は信じない (H21.3.30)
Vol.28
新しい症状“Digital Watch Syndrome” (H21.3.12)
Vol.27
人間の感覚と鈍磨 (H21.2.26)
Vol.26
受動喫煙による健康被害はタバコを吸っている人と同じ (H21.2.12)
Vol.25
忙しいは恥 (H21.1.28)
Vol.24
牛の歩みも千里 (H21.1.5)
Vol.23
継続は力 (H20.12.24)
Vol.22
インドの学会から学ぶもの (H20.12.15)
Vol.21
多様性の国インド (H20.12.8)
Vol.20
太陽に1番近い旧都ルクソール (H20.11.28)
Vol.19
ナイル大河に沿ったナツメヤシとサトウキビ (H20.11.21)
Vol.18
根幹と枝葉 (H20.11.7)
Vol.17
取り残された生活習慣病COPD (H20.10.7)
Vol.16
メタセコイアは歴史を語る (H20.10.7)
Vol.15
リスク管理 (H20.9.22)
Vol.14
格差感の解消は自分の心の中にもある (H20.9.9)
Vol.13
オリンピック雑感-言葉と実力 (H20.8.26)
Vol.12
オリンピックの日の丸で思い出すこと (H20.8.8)
Vol.11
変化することは進歩、現状維持は退歩 (H20.7.22)
Vol.10
簡潔な文に籠められた高い視点とバランス感覚 (H20.7.8)
Vol.9
蛍の光が醸しだす幽玄の空間 (H20.6.25)
Vol.8
メタボ対策とがん対策は車の両輪 (H20.6.10)
Vol.7
刻む1秒の重み (H20.6.3)
Vol.6
グローバリゼーションとアイデンティティ (H20.5.27)
Vol.5
忘れえぬ講義 (H20.5.13)
Vol.4
緊張と過緊張の狭間 (H20.4.22)
Vol.3
医療危機 (H20.4.15)
Vol.2 
グローナカル (H20.4.8)
Vol.1
昨日、今日、明日 (H20.4.1)