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Vol.85 温故知新

タイトル:理事長室へようこそ

 人は記念日を好む。特に誕生日や結婚記念日などでは知人や友人とともに思い出を語らう中で、記憶や追憶がより明確になってくる。社会生活の中で日常は常に平穏無事であってほしいが、そればかりでは脳も退化し、感性も鈍くなってしまうので、時には日常の中に、意識的に記念日という非日常を体験し、脳の活性化を行っているためだろうか。何十年も前の古いことはあたかも意味のないこととして捨て去られる傾向がないわけではないが、古きものをよく知ることが新しいことを知ることにも繋がるとする論語にみられる「温故知新」は極めて重要な先人の教えだろう。

 当財団は本年1月、創立10周年を記念して記念講演会、記念式典、記念祝賀会を開催した。多くのご来賓にご出席いただき、盛会裏に終了することができた。準備に当たっては先ず当財団の歴史を掘り起こすことから始めた。当財団は、結核予防会千葉県支部、千葉県対がん協会、千葉県予防衛生協会、千葉県医療センターの4財団が統合し誕生したが、旧4団体はそれぞれ長い歴史があり、それを如何に記念誌に盛り込むかにかなりの時間をとられた。昭和14年に設立された結核予防会千葉県支部はその歴史と伝統が示すように、資料が保存されていた。資料がほとんどなく、過去に発行されたその財団の記念誌のみから歴史をたどらなければならない団体もあった。資料の保存や整理が如何に大切かを知らされた思いがした。そして統合から10年の間には公益財団法人へ移行した。この移行により従来からの健診・検査・診療を行う「健診・検査機関」から、健診・検査・診療等のデータを活用して調査分析し、県民の健康課題を解決するための普及啓発や調査研究を行う「調査研究機関」へと大きく事業の方向性の転換を計った。この方向転換も当財団の永い歴史から見ても必然であったのかもしれない。

 統合して10年における社会の激変から考えて、今後10年の未来を予測することはほとんど不可能に近いと思ったが、敢えて挑戦してみることにした。少子高齢化が進む中で、がんや生活習慣病のリスク遺伝子検査や予防遺伝子マーカーなどの導入による健診の高度化を図るとともに、地域の住民や児童・生徒が「健康と病気と予防」について体験型で勉強できる施設の創設や予防医療を担う人材育成が財団の未来の方向性と思われた。10周年記念式典を通して、それまで漠然としていた未来が松明の火がつくように少しずつ明確な方向性が見えてきたように感じた。技術革新の目覚しい現代において古いものは軽視される傾向があるが、これは大きな間違いである。歴史を知らないものに将来を見通すことはできない。10周年記念事業を通して、「温故知新」の大切さを痛感した。

平成26年4月7日
公益財団法人ちば県民保健予防財団
理事長 藤澤武彦

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