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Vol.80 がん検診と自助の精神

タイトル:理事長室へようこそ

 がん検診で発見されるがんの8割以上は早期で発見できるが、自覚症状や他疾患で病院を受診し発見されるがんの7割近くは進行がんである。早期がんは低侵襲治療で治癒させることができ、また経済的にも進行がんに比べて安価である。進行がんでは治療はできても侵襲が大きく機能も大きく失われ、がんの再発を抑えるために新規開発された高価な抗がん剤の投与を受けなければならないことが多い。肉体的にも精神的にも経済的にも大きな犠牲を払っても再発で命を落とされる方も少なくない。欧米では子宮がん、乳がん検診受診率は80%を越え、死亡率は低下してきているのに、日本では25%前後ときわめて低く、死亡率も上昇している。がん診療40数年の間に「検診を受けておけばよかった」というようなことをしばしば進行がんの患者さんから聞いた。治療の王道はやはり早期発見、早期治療であり、がん検診でそれが可能となる。 では、なぜ日本人はがん検診を受ける人が少ないのだろうか。がんに罹っても病院で治療をすれば治ると考えている人が多いようだ。もちろん病院で治療して治癒する人もいるが、治らない人も多くいるのが現実である。検診現場でのアンケート調査の結果では、自分は健康に自信がある、自覚症状が無い、がんといわれるのが怖い、などが検診を受けない大きな理由として挙げられている。3つとも、だからこそがん検診を受けなければならない理由ばかりだ。健康に自信があっても明日の命が保障されているわけではない。自覚症状があるがんの殆どは進行がんである。がんは怖い病気だからこそ早期に発見し、早期に治してしまうことが大切だ。 日本は国民皆保険制度が整い、いつでもどこでも同レベルの医療が受けられる。余りにも制度が整いすぎてくると国民に「自分の健康は自分でしか護れない」という根本的な意識が希薄になっていないかと疑問に思うことがある。1990年代までの右肩上がりの日本社会で醸成された楽観主義が今になっても蔓延しているように思えてならない。物事を厳しく論理的に考え、理性的に行動することが必要ではないか。東日本大震災による福島原発事故と同じよう考えるのはレベルが違いすぎているかもしれないが、がん検診受診率の低さにも現れていないか。がんを誤って恐れるのではなく、正しく恐れることが大切だ。正しく恐れるならば、がん検診の大切さが理解でき、がん検診を受診する行動に結びつくと信じる。自分を助けるのは自分しかいない。がん検診で自らの身を護るのは究極の自助の精神とも言える。

平成24年10月11日
公益財団法人ちば県民保健予防財団
理事長 藤澤武彦

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